値上げ要請を無視して下請法違反?
下請け先から、値上げの要請があった場合、どのように対応すべきでしょうか。
「もともと両者で協議して決めた単価なんだから、わざわざ値上げに応じる必要もない。決めた単価を一方的に下げたり、値下げを求めているんじゃないから、問題ないでしょ?」
このような態度で要請を無視していたら、大事になってしまうかも知れません。
2016年12月14日付で、公正取引委員会が下請法のガイドライン(下請代金遅延等防止法に関する運用基準)を改正して公表しています。
その中で、下請法が禁止する「買いたたき」で問題となる事例として、「原材料価格や労務費等のコストが大幅に上昇したため,下請事業者が単価引上げを求めたにもかかわらず,一方的に従来どおりに単価を据え置くこと。」を挙げています。
「…一方的に…据え置くこと。」が違反事例として紹介されているので、据え置いたら必ず違反ということではなく、「一方的に」という点がポイントになりそうです。
では、どのような場合に「一方的に」と評価されてしまうのでしょうか。
他の違反事例などの記載からは、十分な協議をせずに断るような場合が「一方的」な場合に該当するように考えられます。また、同時期に改正された下請取引振興基準で「親事業者は、下請事業者から労務費の上昇に伴う取引対価の見直しの要請があった場合には、協議に応じるものとする。特に、人手不足や最低賃金(家内労働法(昭和45年法律第60号)に規定する最低工賃を含む。)の引上げに伴う労務費の上昇など、外的要因により下請事業者の労務費の上昇があった場合には、その影響を加味して親事業者及び下請事業者が十分に協議した上で取引対価を決定するものとする。」と追加されたことも参考になります。
下請法や下請中小企業振興法のいずれにしても、対象となる取引内容や資本基準がありますが、発注元の基本的なスタンスとして留意する必要があります。即ち、安倍政権になってから春闘に介入してベースアップの実現を要請したり、同一労働・同一賃金の導入を目指すなど、お金の流れをすそ野にまで回そうという方向が強まっており、大企業の中にも賛同する動きが見られます。すそ野にまでお金が行き渡らないと、消費が喚起されず、デフレも脱却できないという考えが根底にあるのではないでしょうか。このような流れを無視していると、ある日突然、上流の取引先からコンプライアンス体勢の不備を指摘される可能性もありますので、注意する必要があります。