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子会社の倒産と親会社の責任

今回は、当ブログへの検索ワードをヒントにしての記事作成です。(この検索ワードで訪問して頂いた方の目にとまれば良いのですが…)

皆さんの会社の取引先に上場企業などの子会社があるとき、その子会社への与信はどのようにされているでしょうか?「あの大手企業の子会社なんだから大丈夫」とか「いざとなったら親会社であるあおの大手企業が払ってくれる」なんて高をくくっていませんか?

(社会的・経済的な話は後でするとして)法律的に言えば、このような考え方は間違っています。親会社と子会社との関係は、親会社がどんなに大きくて有名な企業であっても、また、子会社の100%株主であっても、株主とその株式を発行している会社という関係に過ぎません。株式会社と株主との関係はあくまでも「有限責任」ですから、株主である親会社は設立時に出資した金額以上の責任を法的に追及されることはありません。

つまり、親会社が1000万円の資本金を出資して会社を設立したが、500万円の債務超過に陥って倒産したとしても、親会社としては当初に出資した1000万円がゼロになるという損を被りますが、それ以上に500万円の債務超過分まで補填する義務を負わないということです。このような関係は、上場会社のように株式を100株持っているに過ぎない個人株主と、子会社の株式を100%保有している親会社とで異なりません。(上場会社の株式を持っていて、その上場会社が倒産して、その株式が紙くずになったとしても、それ以上に負担を求められることなんてないですよね?)

従って、親会社としては子会社が倒産しても、既に出資しているものとは別に、子会社の負債の補填をするような義務を負わないというのが法的な結論になります。但し、親会社と子会社で従前の取引があって、子会社が親会社に対して売掛金をもっているような場合には、その売掛金に対する支払いを適切に行う契約上の義務は当然にありますが、これは親会社・子会社との関係とは別のことです。

では、以上を前提に、「あの大手企業の子会社なのだから…」という期待を実現する手段としてよく用いられているのが、取引にあたって、その大手企業に子会社の支払いを保証して貰うというものがあります。但し、保証自体は子会社が倒産する前、即ちまだ事業を継続している状態でしてもらう必要があります。

また、社会的あるいは経済的な話になりますが、法的な結論としては以上のようなものになりますが、世間的には、やはり子会社が倒産して債権者が迷惑を被っても大手企業の親会社が知らんぷりという状況はあまり格好のいい物ではありません。また、親会社のグループ全体の判断としてその子会社(に担当させている事業)を整理するということであればなおさらです。このため、法的な責任は厳密にはないものの、親会社の信用を守るためといった理由で、親会社が子会社の債務を肩代わりするという事例も少なくありません。ただ、このようなケースはあくまでも親会社側のビジネス判断であって法的に強制できるものではないですし、親会社自身の株主に対する(何故法的に義務のない負担をするのかという)説明責任もあるため、過度な期待は禁物です。