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取引先や勤務先が破産したらどうなる?

取引先や勤務先が破産したらどうなるのでしょうか。例によって東京地方裁判所の運用を基準に話をしますので、他の地域とは異なる場合があることはご了承ください。

1 どうやって破産したことが判るのか

事前に察知出来る場合もあるでしょうが、債権者が押しかけることを避けるために破産手続の申立を秘密にしておく場合もありますので、最悪、手続が開始するまで判らないということもあります。

債権者に対しては、破産手続が開始されたことが裁判所から郵便で通知されますので、もし自分が債権を持っている取引先が破産したはずなのに、何の通知もない場合には、取引先の関係者等に確認すると良いでしょう。なお、破産しますといっておきながら、破産手続申立の準備に時間がかかるケースも時々あります。

2 破産手続が始まったらどうなる?

破産手続は、破産管財人が破産者の財産を処分して債権者に対して法律に従って公平に分配をする手続きです。

なので、債権者には破産手続の関係で自分がこれだけの債権を持っているということを届け出て配当に参加する権利を確保する機会が与えられています。(破産債権の届出といいます。)

破産者の財産で払える限度で債権者への支払をするので、債権を届け出たからといって、全額の支払いがされることはほぼなく(そうであればそもそも破産しません。)、全く配当がないケースも少なくありません。配当が出来たとしても数%、10%を超えると破産管財人の立場からすると頑張ったなという気になります。(債権者の皆様からは何でこんなに少ないのかというお叱りの声を頂くのですが…)そうはいっても、破産債権の届出をしない限り、この配当を受け取る事は出来ないので、少しでも良いから配当を受け取りたいという方は、破産債権届を忘れないようにしてください。

破産債権届出は、破産者に対して自分がどのような種類の債権をいくら持っているのかを破産債権届出書に記載して、証拠となるような書類(見積書、請求書や契約書など)のコピーをつけます。忘れてはいけないのが、連絡先の記入と、印鑑を押すことです。印鑑は、後で配当があるときにも使いますから、どの印鑑を使ったのか忘れないように、破産債権届のコピー(pdfとかでも構いません)を手許に残しておくと便利です。

あまり難しく考える必要はないのですが、どのように書いたら良いのか判らない場合には、破産管財人の事務所に問い合わせると良いと思います。特に従業員の方は、給与明細を貰って初めて残業代を含めた金額が判るというかたもいるでしょうし、破産管財人には破産者に雇用されていた人に対して情報を提供する義務があるとされているので遠慮なく聞きましょう。

破産債権届出を提出したら、後は基本的には、破産管財人からの破産債権届出についての確認や、配当実施の連絡を待つことになります。破産手続開始後およそ3カ月毎に債権者集会が裁判所で開かれますが、これに出席しないことで配当を受け取る権利を失うというような事はありません。

ただ、余程大きな事件や債権者が多数の事件でない限り、破産管財人がHP等を開いてそこで破産手続の状況を報告するようなことはないので、破産者にどのような財産があり、どのような処分をしているのかを知りたければ、債権者集会に出席するよりほかはありません。ちなみに、配当が出来ないで終わる場合にも、各債権者にそのことを郵便などで個別に伝えるわけではないので、債権者の方にとっては気付いたら終わっていたということになります。

事業をされている方は破産によって回収できなかった分については損金として処理出来るはずですので、そろそろ終わったのではというころに破産管財人に問い合わせると、状況を教えてくれて、破産手続が配当できずに終わりましたという証明書(異時廃止証明書といいます。)を送って貰うことができます。

3 配当はどのようにされるのか

破産者に何らかの財産があるからといって、すぐに債権者に配当される訳ではありません。破産手続きそのものに経費がかかりますし、破産管財人もその業務に対する対価を管財人報酬という形で頂く事になります(管財人報酬は、裁判所が業務内容から判断して決定します。)

また、破産者が税金や社会保険料等を滞納していた場合にはこれらの債権(多くが財団債権と呼ばれる債権になります。)が優先されることになりますので、これらを全て弁済し終わって、優先的破産債権も全て弁済した後に、ようやく通常の破産債権への配当に至るのです。

通常の破産債権の間であれば優劣はなく、債権額に応じて割合的に支払われる事になります。例えば、破産手続の費用や、管財人報酬、税金などを全て支払終わった後に、100万円の現金が残って、一般の破産債権が1000万あれば、配当率は10%になります。5万円の債権を持っている人は5千円の配当を受け取り、300万の債権を持っている人は30万円の配当を受け取ります。

民事再生手続では、少額の債権について優先的に弁済するというような再生計画が認められていますが(そうしなければならないということではありません。)、破産の場合はそのような制度はないため、個人の債権者も、大手金融機関の債権者も同様に扱われます。

4 給与や退職金はどうなるのか

給与や退職金は破産手続で優先的な債権として認められています。具体的には、破産手続開始前3ヶ月間の未払給与と、未払の退職金のうち、給与3ヶ月分に相当する金額が財団債権といい、税金などと同等の優先性が認められます。またそれ以外の部分も優先的破産債権といって、財団債権よりは劣りますが、一般の破産債権よりは優先的に扱われる債権となります。

ただ、いくら優先的に扱われるといっても、破産者がそれなりに財産を残した状態で破産しないと、手続費用と管財人報酬だけで終わってしまうということになります。

このように、いくらまっていても破産者の財産からは給与や退職金の支払いまで回ってこないという場合や、破産管財人が財産を処分するのに時間がかかるというような場合には、国の機関で、労働者安全機構という組織が、未払の労働債権を一定割合(全額ではありません)で弁済してくれるという制度があります。こちらの制度は破産管財人の協力をえて利用するのが通常ですので、破産手続では弁済がされないような場合や、時間がかなりそうな場合には、破産管財人に相談するとよいと思います。