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要注意な残業時間:どれくらい働いたら危ないのか

2016-01-29

1 はじめに

目の前に仕事が溜まっていくと、どんどんと働く時間は長くなりがちですが、どれぐらい働いたら(あるいは働かせたら)危険を感じるべきなのでしょうか。
せっぱ詰まった状況では、まだまだ頑張れると思いがちですが、頑張った結果、心身に不調を来したり、最悪、亡くなってしまうという不幸な事例は少なくはありません。

労災や職場の安全配慮義務違反が争われる場面で、労働時間はどのような基準で取り上げられているのかという視点から考えてみたいと思います。

2 労災認定などの仕組み

不幸にして従業員が鬱病になってしまったり、最悪のケースとして亡くなってしまったような場合に、長時間労働が原因であると問題にされるケースは少なくありません。
ただ、鬱病や自殺などは、職場での事故(工場の機械に手を挟まれた等)のケースと異なり、必ずしも仕事との因果関係が明確でない場合が少なくありません。つまり、従業員には、当然のことながらプライベートな生活があり、そこでの出来事(家族に不幸があった、こどもが学校でトラブルに巻き込まれた、離婚した、失恋したなど)が原因で心身に不調をきたすことは当然に考えられることだからです。

このため、職場での長時間労働を含めて様々な出来事(人事異動や職場での大きな失敗、クレーム対応など)を総合評価して、私生活での出来事の評価と合わせて、問題となっている鬱病などが業務を原因とするものかを判断するという手法がとられています。

3 長時間労働はどのように評価されているのか

① 鬱病などが発病する直前1カ月を振り返ったときに、160時間超の残業または同程度(例えば3週間で120時間以上)の残業をしていた場合、その病気は業務が原因であると認定される可能性が高いです。
この残業時間は週に40時間の労働時間を超えた分が基準となりますので、総労働時間としては週に80時間、月~金で計算すると一日に16時間ですから、土日休みでも朝9時に出勤して午前様で帰宅するというような生活が2週間以上続くようなら、そろそろマズいなと考えた方がよいことになります。

② ①ほどでなくとも、鬱病などが発病する直前2カ月間を振り返ったときに、1カ月あたり120時間以上の残業をしている場合も、同様に業務が原因であるとされる可能性が高いです。
そうすると、月~金計算で一日に14時間ですから、土日休みでもこのような生活が1カ月半以上続くようであれば、そろそろマズいということになります。

③ 同じく、鬱病などが発病する直前3カ月間を振り返ったときに、1カ月あたり100時間以上の残業をしている場合も、同様に業務が原因であるとされる可能性が高いです。
この場合は、月~金計算で一日13時間ですから、土日休みでもこのような生活が2カ月半以上続くなら、そろそろマズいということになります。

ただ、これらの労働時間の基準は、普通の負荷の仕事をしていてという前提になります。このような長時間残業をしなければならないということは、何かトラブルが原因であることが多いでしょうから、そのような場合には、さらに短い残業時間でも危ないということになります。

また、休みなく連続働く場合も危ないとされています。12日以上、休みなく、残業をしながら働き続けた場合もその直後の発病は業務が原因とされる可能性が高いので、このような働き方も危ないということになります。

4 お仕事もほどほどに

先程も書きましたが、これらの労働時間は他に何もトラブルがない事が前提ですので、なにかトラブルがあって仕事が忙しいときには、より短い労働時間でも危ないということになります。
様々な理由で業務量が増えて労働時間が長くなるということはあると思いますが、会社にとっても働く従業員本人にとっても、従業員の心身の健康は、業務の処理以上に優先されるべきです。
継続して、先程述べたような労働時間が継続するようなら、そのことを会社と従業員で共有し対処していく必要があると思います。