スポンサーリンク

弁護士は信用できるのか?

弁護士である私がいうのも何ですが、弁護士の言うことは信用できるのでしょうか?

息子さんの勤務先の顧問弁護士を名乗って、「息子さんが会社でミスをして多額の損害を与えたので、近くの公園に来る会社の人に300万円渡してくれないと、クビになってしまう。」と言ってくるような弁護士は信用しなくていいのは当たり前です。

自分が相談したり、自分の代理人になる弁護士を信用するのは、当たり前というか、信用できる弁護士を見つけてくださいということなのですが、問題はそれ以外の場合です。

自分が相談していない弁護士を信用できるのかというのが今回のテーマです。

相手方といっても状況は千差万別で、徹底的に争っている相手方の代理人の場合もあれば、相続で特に争いがない状況で他の相続人が相談している弁護士という場合もあると思います。勤務先の顧問弁護士ということもあるのではないでしょうか。

こういうときに、弁護士のいうことを信用しますか?

徹底的に争っているときは、みなさんも警戒しているので、相手にとって有利な(そして自分にとって不利な)事をいっているに違いないと考えると思います。実際にそうであるかはケースバイケースですが、スタンスとしてはこれでOKだと思います。

では、争いが顕在化していないケース、例えば職場と自分の労働条件に関して意見が合わないときに、顧問弁護士もこう言っているとか、顧問弁護士が直接出て来ていわれたらどうでしょうか?
「弁護士が言っているのだから、そうなのかな。」と考えたりしませんか?

「弁護士は正義の味方である」というイメージが世の中にはあると思うのですが(通常は、「弁護士は正義の味方ではないんですか?」という非難される文脈で言われるわけですが…)、このイメージに頼るのは考えものです。むしろ「弁護士はその依頼人の味方である」と考えて頂くのが実際的であると思います。

以前に相談を受けた方に、会社でミスをしてしまって勤務先との間で示談書(信じられないような不利な内容のものでした。)を作成した方がいました。なんでこんな示談書に応じたのかを聞くと、会社に迷惑をかけてしまったし、会社の弁護士が示談書の内容は法律上認められると言ったので…ということだったのですが、事情を伺ったところそのような示談書に応じる必要など全く必要がないと考えられる事案でした。

弁護士法第1条第1項に「弁護士は…社会正義を実現する事を使命とする。」とあるわけですが、例えば世間の誰もが非難する凶悪犯でも、依頼人であれば全力を尽くして弁護するわけですから、この社会正義というのはそれほどシンプルな意味をもつものではありません。そもそも”正義”というのは人の数ほどあるとも言われるわけで、弁護士が実現する社会正義が自分にとっての正義と一致すると信じるのは間違いです。ブラック企業にもブラック企業なりの正義(?)が存在するのです。
たいていの事柄にはとらえ方の違いがあって、その事柄に適用される法律の解釈にも幅があります。
そうすると同じ事実であるはずなのに、立場の違う弁護士からは全く別の主張や見解が出てくることが十分にあるわけで、世の中の争いの多くがこのような見解の相違から生まれているのです。

ですので、目の前の弁護士が何か言っていても、その弁護士は誰の依頼で話をしているのか、そして、その弁護士の話は依頼人の利益を最大限にするためのものであるということを理解しながら聞くようにして下さい。
でも、このことは目の前の弁護士が常にあなたに不利な事を言っているというわけではないことに注意して下さい。弁護士の依頼人とあなたとでWin-Winの関係になる方向性もあるわけで、常にどちらかが損をするということではないのです。

ではどうすればいいの?という声が聞こえてきそうですが、損をしたくなければ自分で相手の弁護士並に知識を得るか、自分でも弁護士に相談するしかありません。ただ、ブログを書いている弁護士がいうことではないですが、ネットの知識を頼るのは結構危険です。必要な事実を取り出して、それに法律やその解釈を当てはめるのはそれほど簡単な事ではありません。餅は餅屋ということで、大事なことは面倒くさがらずに専門家に相談するようにしましょう。

 

個人

Posted by Hassy