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食品アレルギーの責任

学校の遠足でおやつの持参や交換を禁止する小学校が目立ち始めたというニュースが話題になっています。学校での食品アレルギー対策の一環ということのようですが、食品アレルギーに関する法的責任というのは現状でどのようになっているのでしょうか。

学校における食品アレルギー

まず、ニュースでも扱われた学校における食品アレルギーの問題ですが、これは学校給食が中心になりますが、他にも調理実習や今回の様な遠足などでも、食品アレルギーの問題は発生しうると思います。

給食での食品アレルギー発生については、過去の死亡事故に関して裁判になっており、学校は、児童の食品アレルギーに関する情報について職員で共有し、食品アレルギーの発生を未然に防ぎ、万が一アレルギー症状が発生した場合には適切な対応をとる義務を認め、学校の責任を認めています。(保護者側の落ち度があればその分は過失相殺されます。)

文部科学省もアレルギー対応についてガイドラインを作成しており、学校が保護者から申告を受けた児童の食品アレルギーについて、一定の注意義務があり、義務違反があれば損害賠償責任を負う事となります。(ちなみに保護者も把握していない、あるいは、把握していても学校に伝えていないアレルギーについては、学校側の注意義務は軽減され、少なくとも未然に防ぐ義務までは負わないと思います。)

そして、給食や調理実習については、食材のコントロールを学校側ですることが出来るため、その中で対応してきたという事だと思いますが、遠足のおやつということになりますと、そもそもどの児童が、どのようなお菓子を持ってきているのかを把握することは不可能であり、また、児童達が先生に内緒でおやつ交換をすること完全に防ぐ事は難しかろうということで、ニュースにあるような遠足でのおやつ禁止という学校も出て来たのだろうと思います。食品アレルギーは当事者でないと、なかなかその危険性は実感として分からないことが多いので、私はこのような措置もやむを得ないのかなあと思います。

店舗で購入した食品で発生する食品アレルギー

販売されている食品については、原則として、食品表示法でアレルギーの原因となる物質についてその種類に応じて表示が義務づけられているか推奨されています。(食品アレルギーの原因となりうる物質は数多く全てが網羅されている訳ではありません。)

例えば、卵アレルギーの人が、卵が使われていますと適切な表示がされている食品を食べて、アレルギー症状が出ても、その販売店や製造者に責任を追及することは出来ません。他方で、実は卵を使っていたのに、使われていると表示がされておらず、アレルギー症状がでたという場合には、義務づけられた表示が適切にされていなかった訳ですから、責任追及が可能となります。

問題は、表示が推奨されている種類のアレルギー原因物質や、そもそも義務づけも推奨もされていない種類のものが入っていて、表示がされていない場合はどうでしょうか。この場合は表示が義務づけされていないので、「原材料として表示されていないから、使っているとは思わずに食べて、アレルギー症状が出た」と主張するのは難しいと考えられます。

ですので、アレルギーがあると分かっている人は自衛措置として、アレルゲンが入っている可能性があると思われる商品については、メーカーなどに問い合わせをする必要があることになります。

レストランでの食品アレルギー

レストランや、対面販売(手作りパンやさんなど)で提供される食品については、食品表示法に基づく表示義務はありません。これは、このような場合にはお店の人に使用されている材料について直接聞けるからというのが理由になっているようです。

そうすると、お客さんが自分のアレルギーについて何も言わず、レストランで提供された料理を食べてアレルギー症状がでても、レストランとしては何の責任もないことになります。つまり、アレルゲンについて表示する法的義務はなく、また、お客さんからもアレルゲンについて申告をされていない以上、レストランとして注意のしようがないからです。

しかし、お客さんから「自分は卵にアレルギーがあるのですが…」と申告を受けて、料理に使われているか確認されたり、どのメニューを選んだら大丈夫か相談を受けた場合には、話が変わってきます。食品アレルギーの問題自体は程度の差こそあれ周知されている問題ですし、お客さんからアレルギーについて申告された以上、正確な情報を伝えて、アレルギー症状の発生を防ぐ義務がレストラン側にも発生するからです。

これは、アレルギー原因物質が含まれない(あるいは除去した)料理の提供義務があるということではなく、サービスとしてこのような対応が出来れば対応すればよいのですが、仮に、アレルギー原因物質が使われているかどうか確認できないということであれば、その旨を伝え、場合によっては料理の提供を断念するということも含まれます。

一番良くないのは、「多分大丈夫」というような対応を取ることで、レストラン側の正しいい対応としては正確な情報をお客さんに伝えて、お客さんが正しい判断を出来るようにすることになります。

食品アレルギー被害の重大性

食品アレルギーの症状は人によって様々で、軽ければ口が赤くなったりかゆくなったという程度で済みますが、場合によっては、死亡に至るケースもあります。国内の給食でもアレルギーで亡くなった方がいますし、海外では、ビーナッツアレルギーがある女の子が、ピーナッツクリームを少し前に食べた男の子とキスをして死んでしまったというようなケースもあったようです。

食品アレルギーの結果、死亡ということになれば、その法的責任は数千万円のレベルになることが殆どで、その後のレピュテーション低下を含めれば、そのリスクは小さくありません。そもそも、アレルギー被害発生を防ぐためにも、学校や事業者の皆さんには、対策や表示をしっかりとして頂ければと思います。