下請法違反となる「受領拒否」
取引先に依頼された部品などを納入しようとしたところ、「ごめん、要らなくなっちゃった。」と受け取ってくれなかった事はありませんか?
パターンとしては色々あると思いますが
- 受注したとおりに製造したのに、途中で依頼主が勝手に仕様を変更して、元の仕様通りの部品などを受け取らない。
- 依頼主が、決められていた納期を勝手に繰り上げてきて、無理と断ったのに、繰り上げようとしていた納期後の納品を受け取らない。
- 受注したあとに、依頼主側で生産計画が変更されて、プロジェクトがなくなったので受注をキャンセルしてきて、納品を受け取らない。
- 依頼主の都合ではないけれど、依頼主のクライアントから仕事の変更やキャンセルがあって、発注したものが要らなくなったと受け取らない。
などなど、ありそうな話ですが、これらはみんな下請法で禁止される受領拒否に該当します。
下請法で禁止される「受領拒否」
下請法が適用されるには、一定の取引のパターンや発注元と下請側の企業規模に条件がありますが、下請法が適用されるのであれば、上記のようなパターンの受け取り拒否は、下請法が禁止している「下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに、下請事業者の給付の受領を拒むこと。」(受領拒否)に該当する事になるためです。
「受領拒否」に該当しない場合とは?
では、依頼した側(親事業者)が受領を拒否できる場合にはどのような場合があるのでしょうか。
これは下請事業者に責任がある場合に限られており、発注した内容通りの仕事をしない場合や、決められた納期を守らなかった場合が該当します。あくまでも。下請事業者に責任がある場合に限られておりますので、
- そもそも発注内容が曖昧にしか定められておらず、その範囲からは外れていないのに、不合格とする場合
- わざと検査基準を厳しくして不合格にする場合
- 納期が発注時に決められていないのに、依頼主の判断で遅かったとして受け取らない場合
- 依頼主側の協力がなければ、仕事が進められないのに、依頼主が適切なタイミングで協力せず遅れた場合
- 元々の納期が下請事業者の都合を考えず、一方的に無理な納期が決められた場合
などは、下請事業者に責任がある場合とは言えず、このような場合に受領を拒否すると下請法違反となります。
自然災害など不可抗力であっても「受領拒否」となる
気をつけなければならないのは、受取拒否に該当しないのは下請事業者に責任がある場合だけであって、親事業者側の責任の有無は考慮されないことです。
ですので、上記の様に、親事業者側のクライアントの一方的な都合で仕事がなくなったので、下請事業者への発注もキャンセルしようとすることは下請法違反の受領拒否になりますし(もちろん、親事業者とクライアントとの取引内容や企業規模によって別途下請法等が問題となりえます。)、最近問題になる事例として自然災害によって生産活動が止まってしまった場合にも受領拒否となりえます。
例えば、大地震などの災害で自動車部品の一部の生産がストップしてしまったとします。そうすると、自動車メーカーが、他でその部品を調達できなければ、その自動車生産全体がストップする事になります。自動車のように多くの部品を使う製品の場合には、自分とは全く関係のない場所の災害で生産がストップすることは十分にあり得るのです。
この場合、新たな発注はストップしていくことになりますが、自動車メーカーから部品の発注を既に受けており、その部品を製造するための部品の製造を下請事業者に対して発注していた中間事業者はどうすべきでしょうか。この場合にも、下請事業者に責任は無いわけですから、既に発注した分は、約束通りに受領して代金を支払わなければ、「受領拒否」に該当することになります。
いずれ生産が再開したときに、受領した部品を使えば良いという場合が多いと思いますが、仮に災害によって生産計画そのものが終了してしまって、後で受領した部品を利用する可能性がなくなってしまったとしても、結論は同じですので注意が必要です。