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絵師(イラストレーター)と下請法

ゲームやアニメ系のまとめサイトなどを見ていると、イラストレーターの方が発注元(スマホゲーの製作会社が多いようですが…)からひどい扱いを受けているという記事を目にすることがあります。

例えば…

  • そもそも、仕事の発注にあたって発注書などの契約書がない
  • 仕事を納品してもなかなかお金を払ってくれない
  • 約束していたお金が、予算が足りなくなったからといって値切られた
  • アプリの開発がクライアントの都合で中止になったから、イラストも要らない(だからお金も払わない)
  • ゲームで使うから(使ってあげるから)これぐらい(タダ同然)でやってくれない?と言われた

などなど。パターンは色々とありますが結構、ひどいなあと思うものがあります。

それでも引き受けるんだから、契約の自由というか自己責任ではないの?という意見もあるかも知れませんが、このような扱いは下請法上問題になり得る可能性があります。

下請法が適用されるのは?

下請法は、このようにゲームなどに使うために、イラストを描くことを依頼する場合にも適用があります。(情報成果物作成委託の一種ということになります。)

下請法適用の条件として、仕事を依頼する側とされる側の規模(会社である場合の資本金等)に制限があります。具体的には、仕事を受ける側が個人である場合には、仕事を依頼する側が資本金1000万円を超えている必要があります。もし、依頼主が小さい会社で資本金1000万以下である場合にも、大元の発注者との関係次第によっては下請法が適用される余地があります。

下請法で義務づけられていること・禁止されていること

下請法が適用される事になりますと

  • 仕事内容や納期、報酬額、支払日などを記載した書面(下請3条で定められているため、「3条書面」と呼ばれています。)を発注者はイラストレーターに交付しなければならず(メールで送るには、イラストレーター側の承諾が必要です。)
  • もちろん支払も約束した期日(納品から60日以内である必要があります。)までに支払い、遅れたら14.6%の遅延損害金も払う必要があり
  • イラストレーター側に責任がある場合(納期に間に合わなかったとか、イラストの内容が予め定めた仕事内容と違う等)がある場合を除いて、既に決めた報酬を減額することはできず
  • 同じくイラストレーター側に責任がある場合を除いて、成果物の納品を拒否できず
  • また、報酬を決めるにあたっては適正な価格を支払わなければならない(違反すると「書い叩き」になります。)

というルールがあります。

開発会社側でも、流行りのゲーム内容が変わったり、大元の発注者の都合によって開発計画が変更されて、予算や、必要なイラストが変わることはあるのかも知れませんが、一旦、イラストレーターに発注した以上は、発注内容に従った納品がある限り、それを受領して代金を決められたとおりに支払う必要があります。

下請法は役に立つか?

イラストレーターといっても、それ一本で生活している人もいれば、副業というか趣味の延長線でやっている方もいると思いますが、仕事として引き受ける以上は、皆さんが適正な報酬を頂くというマインドが社会全体で育てばと考えております。

下請法は、そもそも偏った力関係を是正しようという意図のもと作られた法律なので、下請法に基づいた権利主張というのは、この偏った力関係のために難しいという現実があります。特に生活がかかっている下請事業者さんにとっては、報復を恐れて、なかなか声を上げられないということは、このような相談を受ける場面で直面することが往々にしてあります。

もしかしたら、趣味の延長線でやっているような方が、思い切って声を上げることによって、状況は変わっていくのかも知れません。