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継続的契約の解除時に気をつけること

企業間においては様々な契約関係がありますが、その多くが継続的契約と分類されるものではないでしょうか。

例えば、製造業であれば、部品や材料の供給や完成品の売買に関する継続的供給契約、部品や完成品の製造委託をする場合の製造委託契約などが考えられますし、小売業では商品の供給に関する継続的供給契約、フランチャイズ契約などが考えられます。また特定の業種に限らず様々な役務提供に関する継続的役務提供契約や請負契約等も考えられます。

これらの契約は、事業というものがある程度の継続性を前提にしているため、一定期間継続する事が前提になっていますが、他方で、その殆どの契約が1年などの期限を区切った有期契約であり、この有期契約を更新させることによって、契約関係を継続させていることが殆どだと思います。

例えば、「本契約の有効期間は○年○月○日から1年間とする。なお、期間満了の3カ月前までにいずれの当事者からも反対の意思表示がないときは、本契約は契約期間を1年として更新することとし、以後も同様とする。」というような規定を用いていることが多いと思います。

契約当事者は、期間限定のプロジェクトなどの事情がなければ、一定期間継続することを前提にしながら、このような更新条項付の継続的契約を結んでいます。しかし、ビジネスの世界は予想通りに進まない事もあるわけで、思ったほど売上が伸びないとか、上流の発注者の都合などの様々な事情により、部品や材料メーカー、下請企業との継続的供給契約を切るという判断を迫られる場合があります。ではその際に気をつけなければならない事はどのような事でしょうか。

更新条項に従えばよいとは限らない

取り敢えず考えられる対応としては、上記の様な条項がある取引を例にすれば、契約に従って3カ月前までに「契約は更新しません。今まで有り難うございました。」という趣旨の通知を送って、継続的契約を更新させずに終了させるということが考えられます。

多くの場合で、相手方企業からは、「そうですか。残念ですが、また今度宜しくお願いします。」というような反応で、円満に継続的契約関係終了となるのではないかと思います。契約書で1年ごとに契約期間を区切って、更新しない場合には期間満了3カ月前までに言えば良いう条件で合意しているのですから、ある意味当たり前の対応です。

しかし、このように上手く事が運ばない場合もあります。

例えば、継続的契約を新たに締結するにあたり、一方当事者が新たな設備を導入したり、人員を揃えたりする等、それなりの額の投資をする場合があったとします。これは継続的契約が数年、あるいは、もっと長期間継続することを前提に、長期間にわたって回収すればよいとの考えから、このような投資がなされるわけですが、継続的契約が予想よりも早く解除されてしまうと、そのような投資回収の目算が狂うことになるのです。

また、企業間の取引とは言え、例えばコンビニのフランチャイズの場合など、運営元と個々の店主とでは経営体力が異なり、個々の店が運営元に完全に依存しているような関係があり、フランチャイズ契約が解消されてしまうと即座に店をたたむしかなくなるというような場合も考えられます。製造業のサプライチェーンでも、下請企業が親事業会社1社に依存しきっている場合が良く見受けられます。

このような場合、約定どおりとはいえ、契約の更新を拒絶されてしまうと、更新拒絶された側は大損害ですから、そのような継続的契約の更新拒絶は認められないという反応になるわけです。

では、このような訴えは認められるのでしょうか

継続的契約終了のやむを得ない事由や信義則の検討

このような事例において裁判所は、単に更新条項の期限までに更新しないという通知をしているからOKとの判断は示さずに、このような更新拒絶がやむを得ない事由によるものかの判断や、権利濫用や信義則違反に当たらないかの判断をした上で、最終的な判断をしています。

この「やむを得ない事由」と「権利濫用・信義則違反」は、文言は違いますが、実際にはそれほど変わりはなく、①それまでの契約更新の回数、②その後の契約更新も予定されていたか、③解消された側がその後の契約継続を前提にしていたか、④またそのような前提に基づいて物的・人的投資をしていたか、⑤解消された側の問題となっている継続的契約取引への依存度、⑥契約解消による損害の度合いなどを総合的に判断するという点で大きな違いはありません。

ですので、契約解消しようとする側からすれば、契約解消に伴う相手方の影響を考えて、長めの予告期間をおいて相手方に新たな取引相手を探す時間的な猶予を持たせたり、取引開始までの経緯である程度の長期発注を前提にしていたのであれば、設備を買い取ったり、未償却分を解決金として支払う等の努力により、そこまで努力しているのであれば契約終了もやむを得ないと言えるような状況作りが大事になります。

他方で、契約を解消される側でも、契約終了の自らの経営の影響度や、契約の交渉経緯などから、何か契約終了に伴う請求が出来ないか検討することになります。契約が終了しても他の取引や新たな取引先に注力するということが出来るのであれば良いのですが、経営が傾くというのであれば、自身の取引先や従業員への責任もありますから、できる事は検討すべきでしょう。