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eSportsと景表法

eSportsというと聞き慣れない方もいるかも知れませんが、ゲームが上手い人(プロとして活動している方が世界にはいらっしゃいます。)同士が対戦する大会が開催され、優勝者に賞金がでるというような事が「世界では」行われています。

これに関して話題になっているのが、5000万円近い賞金が、日本人が優勝した場合だけ与えられないというニュースです。

「Rainbow Six: Siege」というゲームを題材に、上記の様な賞金がかかった大会が開催されるそうなのですが、日本チームが優勝した場合には日本の法律の都合上、賞金を受け取れないと運営側が発表しているというのです。

同じような事は以前にもあったようで、スクウェア・エニックスという日本のゲーム会社が主催したゲーム大会の賞金を500万円から10万円に引き下げたということがあったようです。

では、「日本の法律」とは何なのでしょうか。

eSportsは賭博か?

よく出てくる論点がeSportsは賭博にあたるのではないか?というものです。

例えば、参加者がお金を出し合って賞金をプールし、優勝者が総取りするというような方法をとる場合、要は賭け麻雀や賭ゴルフと同じ事をゲームでやっているだけですから、これはアウトです。

でも、賞金資金を大会の運営元が負担してくれるのであれば、この点は全く問題ありません。

ちなみに、競馬のように、観客がどのプレイヤーが優勝するかに賭けるのはアウトです。

eSportsは景表法違反?

現状で一番の問題と考えられているのは景表法です。

景表法とは不当景品類及び不当表示防止法の略称で、過大な景品を提供したり、不当な公告表示を行って、消費者の選択を惑わさないようにするための法律です。

景品との関係では、①顧客を誘引するための手段として、②事業者が、③自己の供給する商品又は役務の、④取引に付随して、⑤物品、金銭その他の経済上の利益を与える行為が制限の対象となります。

③の要件との関係では、eSportsの対象となるゲームのメーカーやそれを販売している事業者などが運営に関与せずに、独立した事業者が賞金の資金を負担し、大会の運営を行えば、景表法の問題はクリア出来そうですが、現実問題としてそのような運営元がいるのかということになります。

この点について、実際に景表法を所管する消費者庁に問い合わせた方がいるようなのですが、そこで主に問題とされたのは④の取引付随性のところだったようです。有料のソフトの購入又は有料でのゲームプレイの結果、ゲームプレイが上達したりキャラクターが強化された結果、景品獲得のために有利になるのであれば、取引付随性に該当しますという見解であったようです。

ゲームソフトであれば、練習した方が有利に決まっていますし、そのゲームソフトを有償で購入又はプレイするのが全てアウトということになると、なかなか道のりは険しそうです。

ただ、違和感があるのが、このようなeSportsの大会では、腕に覚えがある人だけが参加して賞金獲得を目指すわけで、実際に賞金獲得を目指してゲームソフトを購入する人が、全購入者のどれくらいの割合いるのかなという点です。上手い人のプレイを見て面白そうだなと思ってゲームを購入することはあっても、自分も大会に参加するぞという人は余りいないのではないでしょうか。(あるいは、純粋に観戦するだけという方もいるでしょう。)

大会の運営をする方も、賞金目当てに購入者が増えることを目的としているよりは、単に露出を多くして宣伝効果を目的としているように思われます。

その意味で、このような大会を運営する形では、運営者が賞金を与える相手(大会参加者)と、それによって商品の購入を期待している相手(大会観戦者あるいは大会のニュースを見た人)には大きな齟齬があるわけで、この点はもう少し検討されても良いのではと考えています。

これに対して、このような大会を開催せずに、オンライン要素が基本となるゲームで日々のランキングなどに応じて賞金を与えるということであれば、賞金の対象となり得る人と、事業者が商品の購入者として期待する人の多くが重なる訳ですから、景表法の対象とされても致し方ないように思います。

行政に対する事前問い合わせは、便利ではあるのですが、聞き方によって大分回答が左右されるというのが経験上の感覚です。従って、今回の問い合わせに対する回答も、その問い合わせ内容に対する回答に過ぎないのであって、余り一人歩きするべきではないと思いますし、具体的な大会プランがある事業者さんは、あまり先入観にとらわれずに、景表法に抵触しないスキームや考え方を生み出して、トライしてもらいたいなと思います。