電子マネー・プリペイドカードと法律
例えば、”お店でプリペイドのチケットを発行して、お客さんの囲い込みをやりたい!”というときに気をつけなければならない法律は何でしょうか。
前払式支払手段とは?
お客さんから、お金などの対価を受け取って、その対価に応じた商品を購入したりサービスを受けるためのカード、チケットまたは電子データなどを「前払い式支払手段」といい、基本的には資金決済法という法律の適用があります。
大がかりなものとしては、SuicaやEdyなどの電子マネーがあり、他にも、商品券やギフト券、スタバカードなど特定の店でしか使えないプリペイドカードなども含まれます。小さな喫茶店で販売するコーヒーチケットなども該当しうることになります(例外となり得る事については後述。)。
また、形態としてはSuicaなどのように発行者以外にも加盟店を募って色々な所で使えるものと、スタバカードのように発行した所でしか使えないものに分けて考えており、前者については、「第三者型前払式支払手段」と呼ばれ、自然と発行規模が大きくなることや、発行者と加盟者間の資金決済などもあるから複雑な規制が設けられています。他方で、後者については、「自家型前払式支払手段」と呼ばれておりますが、このような事情は弱いため「第三者型前払式支払手段」と比べると緩やかな規制が設けられています。
自家型前払式支払手段を発行するには
自家型前払式支払手段については、会社に限らず個人事業主などでも発行することができます。
「自家型」であるので、発行者が販売する物品購入やサービス提供に対する利用に限られますが、発行者と一定の関係のある者(「密接関係者」と呼ばれています。)、例えば個人であれば親族であったり、会社であれば子会社等がこの「自家」に含まれます。
自家型前払式支払手段については、そのスタートに際しては法律的な手続はありませんが、発行済みで未使用の残高が1000万円を超えると財務(支)局長への届出が必要となります。
この場合、未使用分残高の半分以上を利用者保護のため供託するなど保全措置をとる必要があります。
この関係で、スタート時点で法的な手続はないものの、少なくとも未使用残高について把握できるように帳簿をきちんとつけておく必要があります。
届出が必要になると発行者の氏名・商号や使用期限その他の事項を利用者がわかるように表示する義務があります。
また、利用規約も作成する事になりますが、通常は、利用出来る場所や、プリペイドに対する代金の支払方法、プリペイドの利用方法、利用期間、プリペイドの利用停止、中断、利用規約の変更等について定められます。
払い戻しについてのルール
払い戻しについては、法律でルールが定められているため、これに従って規約を作成する必要があります。
具体的には、払い戻しが出来る場合がプリペイドを廃止する場合等に限られており、自由に払い戻しすることは法律で原則として禁止されています。これは、自由な払い戻しを認めてしまうと、前払式支払手段が法律で規制されている預り金等に該当するおそれがあるためです。
ただ、余り厳格にこのルールを適用すると実情に合わない場合があるので、一定基準以下の少額の払い戻しや、利用者がプリペイドを利用することが難しくなる場合(病院のテレビカードで退院する場合など)は例外とされています。
資金決済法適用の例外
自家用前払式支払手段であっても、発行から6カ月以内に使用期限が定められている場合には、比較的リスクが小さいため資金決済法の例外とされています。ですので、この場合は未使用残高が1000万円を超えても届出などの必要はありません。また、社員食堂や学食での食券等、一定の関係内におけるものであれば法律による保護の必要性も薄いことから、この場合も例外とされています。
まとめ
以上のようなルールがありますので、6カ月以内に使い切るようなプリペイドチケットなどが利用出来るのであれば、資金決済法の心配をせずに導入することができます(この場合でもお客様とのトラブルを未然に防ぐため、利用規約はつくるべきです。)。お店の業態的に6カ月の期間を区切ってしまうと利用が限られるという場合には、1000万円の壁を意識しながら、超えたら法律に基づいた届出などが出来るよう準備を進める必要があることになります。