下請法とトンネル会社規制
下請法というと、大きな会社と小さな会社の間でしか適用されないイメージがあるかも知れません。
実際にも、下請法適用の条件として資本金に基づく要件があり、例えば製造業の委託(メーカーが部品サプライヤーに部品の製造を委託する場合など)であれば
①資本金3億超の親事業者が、資本金3億以下の下請事業者に委託する場合
②資本金1千万円以上3億円以下の親事業者が、資本金1千万円以下の下請事業者に委託する場合
に限って下請法が適用されるのが原則です。
このような資本金に基づく要件を定めたのは、企業の規模が当事者間の力関係に影響を与えることが多いことと、資本金のような客観的な基準を用いる事によって下請法が適用される場合を明確にするためと考えられています。
トンネル会社規制
では、上記の様な資本金の関係になければ、下請法が適用されることはないのでしょうか?
例えば、資本金1千万円の会社が、資本金1億円の会社から製造業の委託を受けており、この場合下請法が適用されるので、これまで下請法に従った取引がされていたとします。
しかし、ある日、資本金1億円の親事業者がグループ会社との間で分担業務の再編を行って、親事業者の子会社(資本金1千万円)から発注が来るようになって以降、下請法で必要とされる3条書面などが作成されなくなり、代金支払も納入から60日以内に払われなくなった…とした場合、下請事業者としては何も言えないのでしょうか?
形式的に資本金だけを見ると、資本金1千万円の事業者同士の取引であれば上記のとおり、下請法が適用されません。
しかし、上記ケースで、実は分担業務の再編が、資本金1億円の親事業者が、資本金1千万円の子会社にグループ内部で製造委託しており、その一部を下請事業者に再委託しているような場合、親事業者が、資本金の小さな子会社を取引に加えることによって下請法の適用から逃れることが出来てしまうことになります。
そこで、法令ではこのような場合をトンネル会社として規制し、一定の場合には、子会社の資本金が下請法の資本要件を満たさなくても、下請法の適用がある親事業者としてみなすこととし、下請法が適用されるものとしています。
具体的には、
①親事業者が直接下請事業者に委託した場合には、下請法の適用があること
②親事業者と中間会社との間に、支配従属関係(子会社など)があること
③中間会社が、親事業者から引き受けた仕事の全部または相当部分(一般に半分以上とされています。)を再委託すること
という要件を満たす場合に、中間会社がトンネル会社とされ、下請法が適用されることになります。
ちなみに、中間会社が、複数の下請事業者に再委託する場合、相当部分を再委託したかどうかは、各下請事業者(親事業者との関係であれば、下請法の適用があることになる事業者に限ります。)に発注した分を合算して判断することになります。
このように、直接の取引相手との関係で下請法が適用されなさそうでも、商流を辿っていくとトンネル規制により、下請法が適用される場合がありますので、取引内容がおかしい場合には、トンネル規制&下請法が適用されないか検討の余地があると思います。
また、親事業者側の立場からすれば、グループ内で仕事のやり取りをしているうちに、資本金の小さい子会社にも下請法の親事業者としての規制が係るという場合もありますので、注意が必要です。