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金銭以外の賄賂

文部科学省の役人が収賄の疑いで逮捕され、その賄賂の内容が子どもの大学入学への便宜であったことが話題となっております。
文科省の役人がよりによって裏口入学とは…という点もさることながら、「進学の便宜」が賄賂となることへの驚きもあるようです。

1 「賄賂」とは?

賄賂に関する罪は、刑法197条以降に規定されていますが、「賄賂」とは何かについて刑法は定めていません。
一般には、有形・無形を問わず、人の需要又は欲望を充たすに足りる一切の利益とされています。

典型例はやはり金銭ですが、その他にも高価な贈答品(ゴルフバックや高級自動車など)や高級な料亭・レストランなどでの接待なども賄賂に該当するというイメージはつきやすいと思います。
この他にも風俗店などでの接待や、一見正常な取引にみえる金銭の貸付などについても、誰でも借入を受けられるという訳ではないですから賄賂に該当するとされる場合があります。変わり種としてはIPO株を公開価格で入手させることも賄賂に該当するとした判例もあるようです。
このように考えると、大学入学への便宜や就職の斡旋なども賄賂に該当しうる訳で注意が必要です。

2 収賄の当事者となるのは誰か?

刑法上の賄賂は公務員が受け取って成立する犯罪ですから、受け取る側に「公務員」という立場が必要です。ちなみに直接受け取ったのが公務員ではなく、その家族であるなど実質的に公務員自身が受け取ったとみなされるような場合にも収賄の罪は成立するので、公務員に直接渡さなければOKというものではありません。

また、典型的な「公務員」だけでなく、法律上「公務員」とみなされる人も主体となり得るため注意が必要です。このような「みなし公務員」には、身近な所では駐車監視員や国立大学の役職員なども含まれます。そのような立場にある人自身は勤務先からレクチャーを受けられると思いますが、取引先の人は必ずしも職場でそのような教育の機会があるとは限らないので、取引先に接待をしたり、贈答品を贈ろうとする場合には、相手が「(みなし)公務員」に該当しないか注意する必要があります。

3 海外の公務員に対する贈賄

また海外で仕事をしている場合に、特に発展途上国ですと現地の公務員に対する接待や贈り物を求められるケースが少なくないと聞きますが、このような場合に現地ではそれが当たり前だからと安易に応じてしまうと、後で大変な事になります。

このような外国の公務員に対する贈賄は、日本法では不正競争防止法で禁止されていますし、また、海外の法令には贈賄行為の一部(例えば送金を経由しただけなど)でもその国を経由すれば、その国の公務員に贈賄した場合でなくとも、贈賄の罪が成立し多額の罰金や担当者の収監など深刻なペナルティが科されるケースもあるからです。例えば、日本の商社がアフリカの公務員に対して金銭を贈るのに、アメリカの銀行口座を経由して支払った場合、アメリカの公務員の職務が汚されたわけではないのに、アメリカの司法省が日本の商社を処罰して多額の罰金を科すということもあり得るのです。ちなみにアメリカの罰金は日本のような生やさしいものではなく、数十億~数百億円の罰金が科されることも珍しくないので、会社が傾くほどのダメージを受けます。

4 民間企業における賄賂

では民間企業同士ではどうでしょうか。例えば商談を成立させるため、相手方企業の担当者を接待する場合(あるいは受ける場合)です。

公務員でない以上は刑法上の贈収賄に該当しないことは明らかです。会社法で取締役など一定の立場にある人が賄賂を受け取ったり、このような人に賄賂を贈る行為について罰則を設けていますが、「不正の請託」があることが要件となっており、違法若しくは甚だしく不当な行為を行ったり、当然になすべきことを行わない事を依頼する必要があり、立件されるケースはあまり聞きません。

ただ刑事事件とならなくとも、従業員個人が取引先から金銭等を受け取って便宜を図れば、会社にとって損害となる場合も考えられます。就業規則などでこのような従業員の利益の収受について禁止する会社は少なくなく、この場合には懲戒処分等で対応することが可能になります。