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完全歩合給は合法か?

ネットニュースで若手アニメーターの月給が4~6万円程度であるというニュースを見つけました。週に1~2日のバイトなどではなく、むしろ1日10時間とか働いて、休日も週1日とかで働いた結果ということのようです。

何故このような低収入なのかということの説明として「完全出来高制」とか「フリーランス」としての働き方がアニメ業界での常識としてあるということなのですが、このような労働条件というのは法律に照らして許されるのでしょうか。

完全出来高制って?

完全出来高制というのは、ご存じのとおり、仕事の成果に応じて給料が決まる仕組みです。歩合給などと呼ばれたりもします。このニュースであればアニメの元になる絵を何枚仕上げたかに応じて一枚いくらという形で計算されていたようです。また、通常の企業の営業などでも成約1件あたりいくらという形での出来高制を採用しているところもあると思います。

出来高制は、雇用側からみれば成果が出ただけ支払えば良いので良い制度ですが、労働者側から見れば、結果が上手く出たときは給料が上がり、またそれがインセンティブにもなりますが、逆に、成果が出なかったときには給料が下がることとなり生活が不安定にもなるというデメリットもあります。(この結果、雇用側も良い人材が確保出来なくなるというリスクが考えられます。)

出来高制に対する労働基準法のルール

では出来高制についてのルールはあるのでしょうか。

雇用関係である限り守らなければならない法律に労働基準法があり、労働基準法では出来高払制の給与について「出来高払制その他の請負制で使用する労働者については、使用者は、労働時間に応じ一定額の賃金の保証をしなければならない」(労働基準法27条)としており、罰則まで定めています(同法120条1項1号)。

従って、完全出来高制として成果が出なければ給料はゼロというのは労働基準法違反となります。

出来高制で保証しなければいけない額は?

では保証しなければならない「一定額の賃金」とはどのような金額なのでしょうか。

まず守らなければならないものとして、最低賃金(東京では2016年10月1日から時給932円)があります。

また、厚生労働省の通達で「通常の労働者の実習賃金を余り下回らない程度の収入が保証されるべき」とされており、休業手当を参考に平均賃金の6割程度を参考にすることがあるようです。

従って、給与体系に出来高制を導入するとしても、完全に保証ゼロとすることは当然違法として、最低賃金や上記のある程度の収入が確保されるよう、ある程度の固定給部分を設ける必要があることになります。

そうすると、前出のニュースでアニメーターの月給が4~6万というのがフルタイムでの労働であれば、最低賃金(※)すら満たしていないため労働基準法違反ということになりそうです。

※例えば、東京で最低賃金932円で、毎日8時間、およそ週5日出勤で1ヶ月20日働けば14万9120円の給料がもらえるはずです。

「フリーランス」(個人事業主)の場合の最低条件

では、「フリーランス」つまり所謂個人事業主としての契約であって、労働基準法は関係ないのでは?という場合はどうでしょうか。

契約書のタイトルが業務委託契約書であっても労務提供の実態が雇用であれば労働基準法の適用があるので、余り契約書のタイトルには意味がないのですが、労務提供の実態からいっても労働関係にはないといえる場合には労働基準法の適用はありません。

ただ、このような場合でも作業時間に対して最低賃金以上の支払がないような場合には、下請法で禁止される買いたたきに該当するのではと個人的には考えています。

いずれにせよ、このような労働条件でも受け入れてしまう人がいる限りは状況は好転しないと思います。また命や体は一つしかないのですから、夢と割り切って短期間やるのでなければ、このような劣悪な労働条件からは全力で逃げて欲しいなと考えています。