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下請法と手形での支払

2017-04-11

下請法では、下請代金について、下請事業者が取引の対象となる給付を行った日から60日以内で支払期限を定めなければならず(下請法2条の2)、また、下請代金はその期限内に支払わなければならないとされています(下請法4条第1項第2号)。

ただ、世間の取引では90日サイト等の手形支払が行われておりますが、このような商慣行は60日以内の支払という下請法のルールに違反しないのでしょうか。

下請法における下請代金支払ルールと手形

この点については、下請法上、現金の他に手形での支払が認められており、手形支払と、上記の60日期限の支払ルールとの関係では、60日以内に手形が交付されれば良く、手形の支払満期が下請取引の目的物の給付から60日以内でなくても良いとされています。これは、手形については金融機関などに割り引いてもらい、満期前に現金化できるという事情が考慮されているためと考えられます。

このため、この手形については一般の金融機関で割引が困難な手形を交付してはならないとされており(下請法4条第2項第2号)、具体的な例としては支払サイトが120日を超える手形(繊維業では90日)がこれに該当するとされてきました。

下請分野における最近の動向

ただ、手形割引によって現金化がすぐにできると言っても、下請事業者は割引料を負担しなければならないため、100万円の手形を受け取っても現金として100万円を手に入れられる訳ではありません。受注のために価格を下げて、ぎりぎりの利益率で商売をしている下請事業者にとって、割引料の負担は小さくありません。(この反面、親事業者は手形満期まで決済を先延ばしにする事によって、運転資金を確保出来るというメリットがあるので、手形を交付してから満期日までの金利相当額の負担を、親事業者が下請事業者に転嫁しているといえます。)

このため、2016年12月14日に改正された下請取引振興基準では、手形の支払サイトを120日(繊維業では90日)の支払サイトを最低ラインとしつつ、将来的には60日以内にするように求めていますので、このような基準が将来的に下請法の運用基準へも波及する可能性があります。

その他、下請法との関係で支払について注意すべきこと

また、下請法と手形支払の関係では色々と誤解もあるようで

  • 手形支払(例えば90日サイト)としたものについて、現金払いに変更することになった場合に、その変更後の現金払いの時期が下請取引の対象物の給付から60日を超える事になってはいけない(手形の満期よりも早くなれば良いわけではない)。
  • 手形支払を現金払いに変更する場合に、手形支払の時には下請事業者は割引料を負担していたのが現金払いへの変更によってその負担が減り、他方で、親事業者側で早期資金調達の必要が生じるからといって、その分を現金払いの金額から減額してはならない。

といった事項が、注意事項として下請法のガイドラインでも改めて記されているので注意が必要です。

また、手形とは直接関係ないですが、60日以内に支払のルールは受領日からの起算であるため、検収に時間がかかってしまったとか、親事業者のクライアントの承認を待っていたとかは支払遅延の理由にならず、また、締日の翌月末払いとするような場合でも場合によっては60日ルールに違反することになり得ますので注意が必要です(例えば、20日締め、翌月末払いとした場合に、1月21日の納品では2月20日締め、3月末払いとなりますので、60日の期限を過ぎてしまうことになります。)。