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法律の世界での「社員」とは?

2017-07-13

「社員」という言葉を聞いて皆さんは何を思い浮かべるでしょうか?

社員食堂や社員旅行、社員割引というような使い方をするときは、会社と雇用契約関係にある「従業員」を意味するわけですが、法律や法律関係の文章で「社員」という言葉が出て来た場合は「従業員」の事は意味せず、株式会社における株主などその「社団」の構成員を意味する事になるので注意が必要です。

「社団」とは何か?

この「社団」とは一定の目的を持って組織された自然人(普通の人間のことです。)の集まりの事をいいます。つまり、一定の目的をもって人が集まって組織されたものが「社団」であり、その集まった人が「社員」になるわけです。

例えば、ある事業を行ってお金を稼ごうと人が集まって出資をして会社をつくれば、その会社が「社団」であり、その出資者が「社員」になります。仮にその会社が事業をするのに人を雇って働いてもらっても、その人は従業員であって「社員」ではありません。

株式会社を「社団」、株主を「社員」とすれば理解しやすいかも知れません。

ただ、現在の法律では、一人の株主の会社というのも可能ですので、自然人の「集まり」という定義からは株式会社は社団ではないという見方も可能です。また、法人の株主というのも可能ですので「自然人」の集まりという定義からも株式会社の社団性に疑問が生じますが、いずれにせよ、「社団」とそれを構成する「社員」という組み合わせは、世の中の色々な組織を理解する上で役に立つと思います。

「法人」とは何か?

似たようなものに「法人」という言葉があります。これは、法律上の規定に基づいて自然人(普通の人間)でなくとも権利義務の主体となることが認められているものを言います。

具体的には、契約の当事者になったり、銀行口座の名義人、不動産その他の財産の所有者などの権利者になることが法律上裏付けられているということです。

例えば、株式会社や、社団法人などはそれぞれ会社法などの法律に基づいて法人格が認められていますが、町内会などは、人が集まってそれなりに組織だっている(人が引越などで入れ替わっても、町内会などとして存続し続ける)のですが、法人核を認める法律がないため法人ではありません。

具体的な違いとしては、株式会社であれば、銀行口座の名義人や、不動産の所有者などになれるのですが、町内会等ですとこれが出来ずに、銀行口座を作るときも、あくまでも組合長個人が、町内会長という肩書付の口座を持つことになります。

現実問題としては組織の実態に合わせて違いは少なくなってきていますが、やはり、法律上の裏付けがあるかどうかでの違いはあります。

「社団」と「法人」は同じではない

このように「社団」と「法人」は似たような場面で出てくるような言葉に聞こえるかも知れませんが、両者はイコールではなく、「社団」ではあるが「法人」ではないもの(町内会など)や、「社団」ではないが「法人」であるもの(ある法人の100%子会社である株式会社など)が存在し得ます。

株式会社は誰のもの?

「社員」の理解と関連するものとして、「株式会社は誰のものか?」という古くからある議論があります。法律上の理解としては、やはり社員であるところの株主のものというのが答えになると思います。従業員は、全くの第三者からみると株式会社の中の人に思えますが、法律の世界では、株式会社と雇用契約を結んでいる第三者に過ぎません。業務請負などとは、会社との契約関係は違うものの、会社の第三者であるという意味では違いはありません。

このことは、破産などの倒産の場面で強く表れており、従業員の会社に対する給与債権などは、他の債権と比べても優先的に扱われています。他方で、「社員」である株主については全ての債権者に対する弁済が完了した後でなければ、出資した分の残余財産分配に与ることは出来ません。(現実問題として、倒産の場面で株主への分配があるケースは殆どありません。)

このように、会社の運営は役員や従業員など、社員でない人の手腕に委ねられることがありますが、その最終的な責任(出資した額を上限とする有限責任ですが)は社員である株主が負うわけで、その意味でも株式会社は株主のものということが出来るのではないでしょうか。