スポンサーリンク

消滅時効を利用するには

今日は「消滅時効」についてまとめたいと思います。

「消滅時効」とは請求権等の権利が時間の経過によって請求出来なくなることをいいます。

例えば、借りたお金を期限が過ぎても返さずに何年も経過した場合に、返さなくても良くなる(お金を貸した方からすると請求出来なくなる)ことになります。

時効が成立する期間には色々ある

消滅時効が成立するための期間は債権の種類によって違いがあります。

一般には10年(民法167条)とされていますが、商事債権であれば5年(商法522条)です。

また、不法行為であれば3年、医者や薬局の報酬請求権は3年、弁護士費用は2年、買い物の代金・請負代金・学校や塾などの費用も2年、旅館やレストランなどの代金は1年、給料は2年、退職金は5年など、特別な期間が定められているものについてはこちらが優先されます。

消滅時効が効力を発生するには「援用」が必要

債権は、上記の期間が経過したからといって自動的に消滅するのではなく、必ず「援用」(民法145条)という行為が必要です。「援用」とは消滅時効の主張をしますという意思表示のことをいいます。消滅時効は債務者にとって有利な権利ですが、それを利用するかの判断を債務者に委ねていることになります。

「援用」の方法に特別なルールはありませんが、後で説明する「中断」との関係上、いつ「援用」をしたかの証明が後で必要なケースが考えられますので、内容証明郵便など、いつ「援用」をしたかが後で証明できる方法で行うのが一般的です。

時効の「停止」と「中断」

時効の期間は、債権者が権利を行使できる時、例えば弁済期が決まっているものであればその弁済期からその期間を算定し始めます。例えば、給料であればその支払い日から起算して2年経てば消滅時効の期間が満了する事になります。(会社が消滅を主張するには「援用」が必要です。)

では、この時効期間の進行を止める方法はないのでしょうか。また、別の言い方をすれば、時効期間が過ぎてしまえば消滅時効が必ず援用可能と言えるのでしょうか。

法律上、時効の完成を妨げるものとして「停止」と「中断」があります。

「停止」とは文字通りその事由が発生した時に時効の進行が止まることをいいます。

「停止」の事由には、天災の場合にその障碍が解消されるまで、夫婦間の債権についてその夫婦が離婚するまで、相続財産で権利行使する相続人等が確定するまで等、権利を直ぐに行使出来ないことがやむを得ない場合が法律上定められています。

具体的には、時効完成間近に大地震など天災があって権利行使が出来ない場合には、時効は完成せず、インフラなどが復旧して権利行使が出来るようになってから2週間経過したあとになって時効が完成する(民法161条)などと定められています。

従って、時効の進行が一時停止するというイメージで理解していただければ良いと思います。

他方で「中断」は、時効の期間を最初から算定し直すというリセットの効果があります。

具体的な理由としては、「請求」、「差押え・仮差押え又は仮処分」、「承認」が挙げられています(民法147条)。

「請求」というと、請求書や督促状を送ることも含まれるように思われるかも知れませんが、このような裁判外の手続は「催告」(民法153条)に過ぎないとされていて「中断」そのものの効果はなく、「催告」してから6カ月以内に裁判などの正式な手続きをとらなければ時効を「中断」させる事は出来ませんから、一時停止の効果しかないことになります。(ちなみに「催告」を繰り返して何度も6カ月の延長をする事は出来ません。)

ですので通常は裁判を起こしたりして時効を「中断」させるのが一般的です。ちなみに、裁判で確定した債権についての中断後の時効期間は、元の時効期間にかかわらず一律で10年になります。(民法174条の2)

「承認」は、債務者が債権の存在を認める事をいいます。典型的には債権者と債務者の間で債権の存在を確認する書面を取り交わす事ですが、一部弁済や支払時期や分割弁済の交渉を債務者が持ちかけることも「承認」と扱われる可能性が高いので注意が必要です。

具体的には、時効完成間近になって、1割を払ってくれれば、残りはしばらくは待ってあげるからと貸主に提案されて支払ってしまうと、「承認」として扱われ、時効は「中断」し消滅時効の期間がリセットされてしまうのです。

この「承認」は時効期間が満了する前は勿論ですが、時効期間が満了した後で「援用」がされるまでの間でも有効であると一般的には理解されているため、時効期間が満了した後でも、債務者が時効完成に気付いていないことを利用して、一部弁済を促して「承認」させ、時効「中断」をねらう業者なども多くいますから注意が必要です。このような業者は、時効期間が過ぎた債権をタダ同然で買い取って、一斉に請求の葉書を送って、うかうかと「承認」してしまう借主が出てくることを狙っているのです。

まとめ

消滅時効の制度は基本的には以上の様になりますが、細かくいえば、いつから時効期間が進行するのかや、それぞれの債権にどの時効期間が適用されるのか、また、具体的な行為が「承認」にあたるのかなど専門的な判断を必要とする場面が多くあります。一見、「承認」となりかねない行為でも事情によっては時効の援用が出来るケースもあります。ですので、一人で判断せずに弁護士等の専門家のアドバイスを受けながら対応することが良いと思います。