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自己破産したらどうなる?

破産手続の申立をする場合、又は、申し立てした場合にはどのような影響があるのでしょうか。

今回は、破産手続の破産者(債務者)への影響についてまとめてみたいと思います。(なお、東京での運用を基準にしているため、ものによっては地方で多少のルールが異なる場合があります。)

 

1 自分の財産や債務に対するコントロールを失う

破産手続とは、簡単に言えば、破産者が持っていた財産を処分して債権者に公平に分配するための手続きです。しかし、この手続を破産者自身に任せると公平性が確保できないおそれがあるので、この財産の処分や財産の債権者への分配は「破産管財人」が行うことになります。

なので、破産手続によって破産者の財産や債務に対するコントロールは失われて、代わりに、破産管財人がコントロールすることになるため、破産者は、元々自分が持っていた財産や、自分の債務だからといって、自由に処分したり、債務を支払ったりすることが出来なくなります。

2 破産をすると全ての財産を失うのか

会社等の法人が破産すると法人名義の全ての財産を処分して、会社自体は破産手続終了時に消滅することになりますが、普通の人が破産した場合には破産手続中や破産手続後も日常生活は続くので、全部の財産を失うということにはなりません。

具体的には、身の回りの家財道具や価値のないものは持ち続けることができるので、例えば、洋服とか家電などを破産したからといって手放さなければならなくなるということは通常はありません。(但し、ブランド品や高級家電で通常の家財道具といえないようなものは処分される場合も考えられます。)また、自動車なども年式の新しいものや市場価値があるものは別として、10年以上乗っているような国産自動車などであれば、手放さなくてもよい場合が考えられます。

所有していた自宅であれば、普通は処分される事になるので引っ越さなければなりませんが、賃借物件であれば引越も不要です。引越代をどうするかが時々問題になります。原則は破産者が自分でなんとかしなければなりませんが、状況と交渉次第では多少の引越代が自宅の処分代金から出る場合もあるので、破産手続の申立を依頼した代理人の弁護士にも相談してみましょう。

また、破産手続が開始した後の収入は完全に自分のものになるので、今まで借金の返済で日々の暮らしに困っていた方も、自分の収入を自分の生活費に使うことができます。極端な話、破産手続開始の翌日に6億円の宝くじに当たっても、破産手続で取り上げられることはありません。

ただ、新たな借金は基本的に出来なくなるので(これは破産手続以外の民事再生や任意整理でも同じです。)、自分の収入の範囲内で生活するように気をつけなければなりません。

3 友達や親戚から借りたお金は返せる?

最初でも書いたとおり、破産手続は破産した人の財産を公平に債権者に分配する手続きなので、いくらお世話になった人とはいえ、友人や親戚に優先的にお金を返してしまうと「公平な手続」が出来なくなります。また、実際に破産手続申立前でも友人や親戚にお金を返してしまうと、破産管財人がその友人や親戚に対してそのお金を引き渡せと請求できる制度(否認権の行使といいます。)があるため、却って迷惑をかける結果になりかねないので止めた方が良いといえます。

また、一部の債権者だけ破産手続に含めないということも出来ないので、全ての債権者を平等に破産手続に含める必要があります。銀行などの大きな会社と個人では違うのではという考えもあるかも知れませんが、法律に基づいた手続である以上は、平等に扱う必要があります。

4 破産をしたことは周りに知られる?

これはケースバイケースです。例えば、お金を借りるなどして債権者になっている人には必ず知られます。破産手続が始まると、債権者に対して、自分が持っている債権を破産債権として届け出て下さいという通知が裁判所から全ての債権者に対して行われるからです。

勤務先に知られるのかということについては、会社からの借入をしていなければ通常であれば知られるケースはないでしょうが、債権者集会の出席のために有給をとったりするときに、理由を正直に伝えれば知られる場合もあるかも知れません。

同居の家族に内緒にしておくのは微妙に難しく、破産管財人の協力も必要です。破産手続が開始すると、破産者宛の郵便物が全て破産管財人に転送されて中身をチェックされる事になるのですが、チェックし終わった後の郵便物が破産管財人から転送されてバレるということが考えられますので、自分から破産管財人の事務所へ取りに行くなどの工夫も必要です。ちなみに破産手続が正月をまたぐと年賀状も全て転送されるため、年賀状を受け取るのは年明けしばらくたってからということになります。

5 選挙権を失うのか。仕事はどうなるか?

実際のところ余り興味が亡い方が多いかも知れませんが、選挙権や被選挙権などの公民権は破産によっても失いません。また、通常の会社勤めの方で破産したことを理由に解雇される事もありません。(破産をしたことを理由とした解雇は不当解雇になります。)但し、生命保険の外交員や宅建業、警備員などをされている方は自己破産の手続中は業務が出来なくなってしまうので、会社と相談して、このような資格を必要としない部署に職務内容や配置転換をお願いする必要がありますので、申立を相談する段階で自分の職業と業務内容は申立を依頼した弁護士に相談する必要があります。

 

細かい事は色々とあるので、不安な点は、破産手続の申立を依頼した弁護士に確認しておきましょう。